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愛も怨念も。 ~能「道成寺」~ [完全にお客。]

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 学生の時、能の仕舞を習っていた能楽師の味方玄(みかた・しずか)先生です。能楽師は年配のおじいちゃまばかり、というイメージをもっていた私にとって、当時30歳の玄先生に出会えたことは幸運で、衝撃でした。
 先日、福岡市の大濠公園能楽堂に、玄先生がシテ(主役)を務める、能の大曲『道成寺』を観に行きました。この演目は、お客さんがいる前で能舞台に重い鐘を吊り下げ、演目の途中で主役が鐘の中に入り込み、鐘がドーンと落ち、しばらくして鐘を持ち上がると、着替えた主役が出てくる・・・という、とても大掛かりな大曲です。

 この「道成寺」が私の運命の曲目でして、初めてチケットを買って観たのが「道成寺」。さらに、席の両隣に座った人との偶然出会いが、私の興味を決定付けたのでした。
 大学4回生で、就職できず5回生になることを覚悟しつつあった10月。京都観世会館の2階席。一人で行った私は両隣のおばさまに話しかけてみたのです。「私は初めてなんですけど、よくいらっしゃるんですか?」と。そうしたら!
 右隣の方は、謡本を持参し、文字を目で追いつつ言霊をかみしめながら観賞する、ちょっとおとなしいタイプ。「謡のコトバがいいのよ。それに装束。綺麗ですものねえ。あなたお若いんだからこれから勉強なさったらいいわよ。」と。
 一方、左隣の方は、元気印のおばさまで、まるでジャニーズファンのように目をキラキラさせながら、「能楽師の○○さんがステキ♪以前の薪能でものすごくカッコ良かったから、この人が出るときは観に来るの!」と。
 びっくりでした。同じ舞台を観るのに、これほどまでに両極端なタイプの方がいるのか、と。能は古めかしくて、気むずかしくて、単調なものだと思っていたけれど、もしかしたらそうじゃないかも?こんなに性格が違う女性を、どっちもトリコにしちゃうんですもん。能ってどんなもの?私も自分の目で見て確かめてみたい!と思いました。

 あれから約10年。
学生時代は玄先生の裏方を手伝ったり、弟の味方團(みかた・まどか)先生に謡を習ったり、装束をつけてもらったり、宮崎時代には薪能でイヤホンガイドのガイド役をさせてもらったり。能をあらゆる方面から観てきて、その奥深さに、未だ興味が尽きません。

 さてさて。「道成寺」がどんなストーリーかというと、いとしい人を思う女が、その思いの強さから彼の命を奪うことになってしまうが、時が過ぎてもなおその男が忘れられない・・・というお話。愛憎の物語です。
 初めて観た時と、今の私とでは、感じ方は違いました。玄先生にも言いましたが→白拍子となって現れた女の、拍子を打つ足もと、そしてお囃子の小鼓の地響きするくらいの掛け声が、いとしい人へのどうにもならない思いを吐露しているようで、切なくて胸が痛くなりました。「道成寺」を観るのは3回目で、これまでは「女って怖い~」という感想でしたが、今回、これほどまでに女に感情移入し、悲哀を感じるとは。

 能は、「感情」が着物をきたものだと思います。
 愛、怨念、情念、虚無・・・。
 言葉では表現できないような複雑な感情を、観る人の心にまっすぐ伝える。あ~昔の人も同じような感情を持っていたんだな、昔の人も、愛と憎しみは表裏一体だったんだな、とか思います。
 体調を整えて、前日はよく寝て、次はどんな舞台をみようかな。


(2008.12.20 大濠公園能楽堂「朱夏の会」にて)

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〔写真:「あたらしい教科書13 古典芸能」より
           プチグラパブリッシング 発行〕
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